巨体をぶつけ合う大相撲の世界で、身体障害者手帳を持つ異例の幕内力士がいる。
東前頭16枚目の友風想大(30)=本名南友太、中村部屋=。大けがの後遺症で右ひざから下の感覚はなく、足首を動かすことができない。
それでもこの秋場所は5日目時点で4勝1敗と好調を維持する。中村親方(元関脇嘉風)は弟子の戦いぶりに目を細める。
「よくやっている。パラリンピックの選手がオリンピックで勝負しているようなものだからね」
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昨冬に中村部屋の稽古を訪れた。当時十両だった友風は、精力的に弟弟子たちと体をぶつけていた。
立ち合いでの力強い踏みだしに、土俵際での粘り。素人目には、足の状態はわからない。「信じられません」と率直な感想を伝えると、友風は「わはは」と豪快に笑った。
「そういう言葉が聞きたくて、いま相撲をやっています」
ベテランにさしかかる友風にとって、20代前半の日々は「あっという間」だったという。
「なんか、うまくいきすぎていたと思います」
川崎市出身。日体大を経て2017年に初土俵を踏んだ。序ノ口と三段目で優勝を果たし、所要11場所のスピード出世で新入幕した。
ハイライトの一つが、19年名古屋場所13日目だ。全勝中だった鶴竜から金星をつかんだ。初土俵から14場所目での初金星は、年6場所制になった1958年以降では元大関小錦に並ぶ最速記録(幕下付け出しを除く)だった。
ただ、その4カ月後。順風満帆だった人生は突如暗転する。
自身最高位の西前頭3枚目で…